2007年 09月 19日
つい最近聞き及んだところによりますと、若い層の間にドストエーフスキーの「カラマーゾフの兄弟」が流行っているとか。信じられないニュースで、その話を教えてくれたひとに「ほんとか?ほんとに?」と何度も念を押してしまいました。もちろん、嬉しいには違いないのですが。 さて、ある年、ドストエーフスキーを愛読しているという方がいらして、何を?とお聞きしましたら、初期作品の何かとお答えになりました。しかもこの方はその作品のみ何度も読んでいらっしゃるとのことで、大変驚いたことでした。 一般的には読書のお好きな方には当然愛読書が何冊かそれ以上かおありでしょうが、その作家のうちその作品しか読んでないという方はそれまで聞いたことがなく、そういう読み方もあるのかと、目からうろこ百枚落ちる思いがしたものでした。その方にとってその作家のその作品が琴線に触れるという以上にこころに必要な糧になっていたのでしょう。 すろうりぃ輩は、処女作の『貧しき人々』の他初期作品を何作か読んだ覚えだけはあるのですが、そのおっしゃったタイトルに覚えがありませんでした。ですから、その方を前に他の作品は読まないのですかなどと不躾なことは訊けませんでしたし、印象に残ってもいないのに自分も読んでいるかも知れないなどと口幅ったいことも言えないと、内心ちょっと、というか、大いに赤面する思いでした。仮にその作品を「読んで」いたとしましても、その方の前では実質「目を通したことがある」程度にしか言えないのだと自戒いたしました。 さて、因みにすろうりぃ輩がもっとも好きなドストエーフスキーの作品は上述の『貧しき人々』ですね。これが編集者の目にかなって出版にまで至らなかったら、ペテルブルグ市中を流れる河に飛び込んで死ぬという決意でもって著されたという逸話もあります。わたくしにとっては当時の行き詰まっていた思いを突破できた、恩人みたいに思い出す、美しく切ない作品です。未完の大作『カラマーゾフの兄弟』もいいですが、こちらもぜひどうぞ!(よだ めをとおした すろうりぃ記す)
by satoyama-06
| 2007-09-19 17:19
| 読書・書籍
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